症例紹介
短頭種気道症候群 (鼻孔拡張術、軟口蓋切除術)
2023/08/03/
今回は病気での来院ではなく、犬種独特の先天性異常についてのお話です。
短頭種気道症候群は先天的な構造異常
ブルドッグ、フレンチブルドッグ、パグ、シーズー等の短頭種にみられる上部気道(鼻から喉の奥)の構造的な異常により気道が狭くなってしまう「短頭種気道症候群」という病気があります。ガチョウのような特徴的な呼吸音を伴った呼吸困難と、興奮、発熱が症状として挙げられ、重度の例は命にかかわる場合もあります。
原因は先天的な構造異常(狭い鼻孔、軟口蓋の過長など)であり、軽度なものから重度のものまでありますが、中程度~重度の症例は慢性的な呼吸困難により後天的な構造変化も加わって症状が進行します。
短頭種気道症候群の治療は外科手術
短頭種気道症候群を持つ症例は、去勢や避妊手術を行うような若齢時に鼻孔拡張術や軟口蓋切除を行う事で、将来的な呼吸困難を楽にしてあげられる可能性があります。
☆鼻孔拡張術
以下の写真は①手術前、②手術中(症例の左鼻入り口を手術で広げた)、③手術後のもので、鼻の入り口を広げています。
☆軟口蓋切除術
以下の図は喉の奥を横から見た簡易的な図です。
以下の写真と図が軟口蓋過長の症例のものです。
軟口蓋が長いために気道に空気が入りにくく、苦しくなります。苦しさに伴う興奮や緊張により、一段と呼吸が荒くなると、喉の周りは充血し腫れてきます。
正常な呼吸であれば熱放出もされるのですが、このような呼吸状態では熱がどんどんこもっていき、熱中症となる例も少なくありません。
短頭腫で呼吸困難および熱中症で命をおとす例があるのはこのためです。
本例は鼻孔拡張術に合わせて、軟口蓋の過長部位を切除しました。以下は切除後の写真➄になります。
獣医師からコメント
短頭種気道症候群は程度に個体差はあるものの、進行性の疾患であり、重症化した症例は他の手術であっても麻酔リスクが高くなります(最悪術後の呼吸困難で亡くなってしまう例も見たことがあります)。幼犬のころから〝いびきがうるさい″や〝少し興奮すると舌の色が青紫になる″などの症状をお持ちの子(短頭種)は、短頭種気道症候群を持っている可能性があり、まだ若齢なら手術をご検討いただければと思います。
また、この病気は肥満によってもより悪化するため、体重のコントロールにも日々気を付けていただけると幸いです。
鴨宮動物病院では、健康診断やワクチンなどの予防医療から外科手術までを幅広く診療対応しております。