症例紹介
右後肢に発生した肥満細胞腫を摘出した犬(皮膚腫瘤切除術+皮弁術)
2023/08/02/
主訴
右後ろ足の裏側(大腿部の裏側あたり)にしこりを見つけたと来院されました。
検査
針を刺す検査(細胞診)にて肥満細胞腫と診断されました。
血液検査やエコー検査などから明かな転移がなく、麻酔リスクも大きくないと判断されたため、手術を行うことになりました(写真①)。
※肥満細胞は炎症細胞の一種でアレルギーの時などに仕事をする細胞です。太っているから増えるわけではなく、細胞内に生理活性物質(ヒスタミンやプロスタグランジンなど)を沢山もっていて細胞自体が大きくなるためにこの名前がついたとされます。
肥満細胞腫自体は身体のいろいろなところにできますが、一般に悪性腫瘍であり、しこりが小さくても広めの切除が勧められます(ケースにもよりますが、腫瘍の端から2cmの“余白”(水平マージン)と筋膜(垂直マージン)の一括切除が推奨されます)。
治療:外科手術
腫瘍から上記*のようなマージンを確保して切除したため(写真②)、欠損部が広く、通常の閉鎖方法(皮膚縫合)では術創を閉じることができません。そのため、術創周囲の皮膚を用いる皮弁術で閉鎖を行いました(写真③)。
術後痛くない様に、局所麻酔薬を投薬するためのチューブも設置しています(写真④)。このチューブのおかげで、術後も痛がることなく過ごせました。 術後二週間程で抜糸となり、現在の経過は良好です。
獣医師からのコメント
肥満細胞腫の治療については、外科療法(手術)の他に放射線療法や化学療法(抗がん剤)が考慮されることもありますが、基本的に外科療法が適応となる場合は手術が勧められます。
ただし、発生部位が特殊な場合、腫瘍が大型の場合(完全切除が難しい)、すでに転移がある場合、麻酔に耐えられない持病がある場合等、症例に応じて治療・検査について相談させていただいています。
放射線療法や特殊な術式が必要な場合は大学病院などの二次診療施設への紹介をご案内しています。
一方、すでに進行期(いわゆる末期)の場合や予後が厳しい場合等、抗がん治療が難しいケースについては、緩和ケアなどQOL維持のための対症療法のご提案をしています。
鴨宮動物病院では、健康診断やワクチンなどの予防医療から外科手術までを幅広く診療対応しております。