症例紹介

乳腺腫瘍切除を行った犬 (乳腺領域切除術+子宮卵巣摘出術)

2023/08/02/

主訴

腹部にしこりをみつけ当院を受診されました(先週発見したがいつからあるかは不明とのこと。十二歳、未避妊雌)

検査

細胞診から乳腺腫瘍と判断し、血液検査、X線検査、超音波検査等を実施しました。

明かな転移所見は見られず、麻酔リスクも明かなに高くなかったため乳腺切除および子宮卵巣摘出の提案を行いました。

治療:外科手術

乳腺腫瘍の切除術には部分切除術、領域切除術、片側乳腺全摘出術、両側乳腺全摘出術など様々な術式があり、症例によって適応が異なります(猫は悪性の乳腺癌が圧倒的に多いため片側全摘出や両側全摘出が検討される事が多いです)。

本例は腫瘍の大きさや経過、持病や年齢などから飼主様との相談し、大型の腫瘤がある左第5乳腺を中心とした乳腺領域切除術(左第3~5乳腺)に第2乳腺部分切除術を加えた術式を選択することとしました(写真①の赤線範囲)。

また、乳腺腫瘍の予防効果はすでにないものの(下記*参照)、将来的な雌性疾患の予防のために子宮卵巣摘出術も合わせて行うこととしました。

写真①
写真①
写真②
写真②
写真③
写真③

まず、全身麻酔下でお腹を開けて子宮卵巣を摘出し、腹筋を縫ってお腹の傷を閉じます。

その後、乳腺切除のために皮膚切開を広げ、左乳腺に入っていく動脈を結紮して、乳腺腫瘍とともに第2~3乳腺を一括切除しました(写真②)。

術後に局所麻酔を注入できるようにカテーテルを留置し、皮膚の縫合を行いました(写真③)。

本例は経過良好で術後4日前後で退院となり、手術から14日程で抜糸となりました。

術後の病理組織学的検査では、第2・第4乳腺の腫瘤は良性腫瘍だったものの第5乳腺は乳腺癌の診断でした。

腫瘍としては完全切除出来ているという病理評価であり、脈管内浸潤像やリンパ節転移が認められませんでした(最終診断:乳腺癌 臨床ステージⅢ)。

獣医師からのコメント

犬の乳腺腫瘍は、条件*はあるものの避妊手術で発生率が低下するとされる病気です(*初回発情前の避妊手術で乳腺腫瘍の発生率は1%以下に、初回と2回目の発情前の手術で10%以下に、2回目と3回目の発情前の手術で30%以下になるとされ、それ以降の手術では予防効果に統計的な有意差はないようです)。

たとえ3回以上の発情が来てしまった後だったとしても、将来的な子宮卵巣腫瘍の予防、子宮蓄膿症の予防がメリットとして挙げられます。

避妊手術後に太りやすくはなってしまう子が多いものの、まだ手術をされていらっしゃらない飼主様はご一考頂ければと思います(高齢のワンちゃんの場合は持病によっては勧められない場合もありますのでご相談ください)。

鴨宮動物病院では、健康診断やワクチンなどの予防医療から外科手術までを幅広く診療対応しております。

お困りの方は、気軽にお電話 または LINEにて診療予約・お問い合わせください。

前のページに戻る

こちらから今すぐご予約!

診療時間を見る